フジファブリック 山内総一郎の
1st Albumがリリース

山内総一郎 1st Album
「歌者 -utamono-」2022年3月16日発売
初回生産限定盤 [CD+BD]
AICL-4185~4186/ ¥4,400(税込)
通常盤 [CD only]
AICL-4187 / ¥3,300(税込)

  • 01.Introduction
  • 02.白
  • 03.最愛の生業
  • 04.大人になっていくのだろう
  • 05.歌にならない
  • 06.Interlude
  • 07.青春の響きたち
  • 08.風を切る
    ※高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2022 J SPORTS中継テーマソング
  • 09.地下鉄のフリージア
  • 10.あとがき
  • ●“山内総一郎生誕祭~October Ensemble~” at Zepp Haneda on 2021.10.25
  • ●History of “歌者 -utamono-”

取材・文/天野史彬

―山内さんがソロアルバムを作られると知ったとき、例えばギタリストとして音楽世界を構築する作品であったり、あるいはパーソナルな弾き語りを披露するものであったり、いろんな方向性が考えられるなと思ったんです。でも、届けられたアルバム『歌者 -utamono-』はそのどちらとも違う、非常に普遍的でポップな、まさに「歌もの」のアルバムですよね。まず、今回のソロの出発点は、どういったところにあったのでしょうか?

随分前の事になるのですが、インストアルバムの提案をいただいたことはあったんです。そのときは、「ギタリストとしてのソロアルバム」というニュアンスだったんですけど、ノリ気になれなくて、お断りさせてもらったんです。「バンドで表現できていないことを、表現したらどうか?」というお話だったんですけど、バンドで表現できていないことはないと感じていたし、「もっとパーソナルな部分を曝け出したい」という理由でソロをやるとか、そういうことも自分には考えられないことだったんですよね。やっぱり、「ソロアルバムを作りたい」と思って音楽活動をしてきたわけではないので、僕は。

―あくまでも、バンドマンであるという。

でも、フジファブリックで『I Love You』のツアーを終えたあとにバンドのこの先のことを話し合っていて、バンドのことをもっと知ってもらえないか、フジファブリックというバンドの素晴らしさをもっと伝えられないかと考えたときに、その方向のひとつとして「ソロアルバムを作ってみたらどうか」という話が周りの人たちから挙がったんです。僕も「それならできるかもしれないな」と思ったんですよね。「山内総一郎」という名義で、フジファブリックという素晴らしいバンドのことなら歌えるなと思った。それが、今回の出発点なんです。なので、この作品も、あくまでのフジファブリックのバンド活動のひとつだと僕は思っていて。自分の名前で出す最初のアルバムですけど、自分の生い立ちを歌うようなものではなく、あくまでも、フジファブリックというバンドに捧げたものとしてなら、作れるかもしれないなと。

―改めて振り返ると、少年時代の山内さんにとって、歌とはどういった距離感のものでしたか?

まず、自分の声に対する印象が大きかったです。学校の先生が転勤されるか何かで、ボイスメッセージを家のカセットデッキで録ったことがあって。そこで録ったものを聴いたときに、「俺の声ってこんなものだったのか」って、ちょっと内向的になるくらいショックを受けたことがありました。あまり、いいサウンドだと思わなかったんですよ。それがあって、歌うことに対して臆病になってしまう時期もありましたね。でも、学校の合唱大会なんかで歌うのはすごく楽しくて。あの、涙が出るような一体感や響きが好きでした。で、高校生になってギターを弾きながら歌い始めるんですけど、そのときはコードを弾くことが前提で、スピッツやウルフルズ、奥田民生さんの曲を、歌本を見ながら呟いている感じでした。ただ、高校生の頃の文化祭で先生に「お前、音楽やってるなら、今からステージで歌え」と言われて、歌ったことがあって。SMAPの“夜空ノムコウ”、超名曲ですよね、あの曲を歌って。やっぱり同じ学校のやつが歌うもんで、すごく盛り上がったんですよ。そこでは「楽しいな」っていう気持ちもあったんですけど、でもどこかで、「歌は、自分でやれるものではない」という意識がありました。

―当時、好きだったボーカリストはいましたか?

当時、ボーカリストとしてカッコいいなと思ったのはカート・コバーンとジョン・レノン。彼らの歪んだ歌声がカッコいいなと思っていました。あと、スティーヴン・タイラー。『Nine Lives』というアルバムの1曲目に猫の声が入るんですけど、実際には猫の声じゃなくてスティーヴン・タイラーの声なんですよ。「なんで、あんな声が出るんやろう?」って思ってました。他にも、ボビー・マクファーリンのような人にも憧れましたね。

―子供の頃はショックを受けたということですが、今、ご自身の声に対してはどんな思いがありますか?

もう何回も何回も聴いているので、落ち込んでられない(笑)。自分のできないことに悲しんでいる暇は、レコーディングのときにはないので。それに、やっぱり声でも好きな音が出たら嬉しいんですよ。段々、好きな声が出るようになってきた気もするし、レコーディングも楽しくなってきました。それに応じて、憧れもより強くなってきている気もするし。

―話をアルバムに戻すと、今回のアルバム『歌者-utamono-』は、曲ごとに違ったアレンジャーや演奏者を迎えて制作されたそうですが、音楽的な面に関してはどういったことを考えられていましたか?

まず、歌が中心にあるアレンジにしたいということがありました。人と一緒にやることによって、歌の置き位置をより追求できるんじゃないかと思ったんです。具体的な音楽性に関して言うと、ロックにしようとか、R&Bにしようとか、そういう縛りは設けなかったですね。なので、かなり雑多なものにはなっていると思うんですけど、そこに歌があれば一貫性を持たせられるだろうということで、アレンジはしていただきました。今回声をかけたのは、皆さんフジファブリックのことも、僕個人のことも知ってくださっているアレンジャーさんたち。演奏に関しては、基本的に僕は歌とギターだけで、後は全部、アレンジャーの方や来ていただいたミュージシャンの方々に演奏していただいています。演奏に関しては、知り合いの方もいるし、まったく初めての方もいますね。

―今回のアルバムが抱く歌の領域は「バンドの歌」という面だけに規定されない、とても広いものですよね。なんというか、この歌たちを聴いていると、とても山内さんの個人的な歌のようにも聴こえるし、聴いている僕自身の歌としても捉えられるような感覚があるんです。

あくまでも裏テーマ的なものなんですけど、物語をプロットとして書いたんですよ。「東京八景」的なものを歌にしようと思って。

―それは、具体的に主人公などを設定された物語ですか?

そう、凄く短めなんですけど、例えば“幸いの生業”はレコード会社の社員とか、“大人になっていくのだろう”は、JRの下請け会社で働いている夜勤の人で、飯田橋の駅を作っていて、38歳くらいで、赤羽のアパートで角部屋に住んでいて、とか……。

―本当に詳細ですね(笑)。

本も好きですし、プロット作りは素直な気持ちでできるんです。もちろん、曲を作っていく中で物語から離れていったものもありますし、実際に取材をするわけでもないので本当に空想なんですけど、「この人、家で三ツ矢サイダー飲んでそうだな」とか、そういうのを空想するのが普段から好きで。人を見るのが好きなんです。それもあって、「こういう仕事をしていて、こういう部屋に住んでいて……」みたいなみたいなことを、それぞれの曲でまず書き出しました。とにかく前提としてあったのが、「吐露」としての歌にはあまりしたくない、ということで。もちろん、すべての曲に僕の個人的な経験も反映されているとは思うんです。例えば“青春の響きたち”を書くときには自分の卒業アルバムを見返したりもしましたし。でも、距離感としてはその物語に僕自身が離れたりくっついたりしていくような、そんな距離感なんですよね。あくまでも、その物語の主人公のブルースになるように……ブルースというのも、「魂の歌」という意味でね。そういうものにしたいと思って曲は作っていきました。

―「東京八景」と先ほど仰いましたが、山内さんは東京出身ではないですよね。東京という街にはどういったイメージがありますか?

20歳くらいまで大阪で過ごして、人生の半分くらいを東京に住んでいるんですけど、そもそも東京に憧れはありました。今でも当時とは違う形ですけど、憧れを持っているし、よく言われるタイム感の速さは「大変だな」と思うこともあるんですけど、僕は、東京という街が好きだなと思います。好きじゃなかったらこんなにいられないと思う。東京にもいろんな街がありますけど、その一つひとつに「歌」を感じるんです。商店街とか、街の人とか……僕が今住んでいる街でも、歩いているおじいちゃんおばあちゃんの皺一つひとつにブルースを感じる。そんな街なんだと思いますね。

―山内さんは何故、「魂の歌」としてのブルースに惹かれるのだと思いますか?

なんでやろう……前に、「ハナレフジ」としてハナレグミの永積(タカシ)くんと僕らでツアーをしたことがあったんですけど、永積くんはしきりに僕の歌を「ブルースだね」って言ってくれて。その言葉は素直に受け取ることができたんですよね。なんでブルースに惹かれるのかと言うと……「その人にしかないもの」だからかな。僕は大阪という土地柄、ブルースというジャンルを好む人たちが周りには多くて。そういう人たちとの共通言語として12小節のセッションをよくやっていたんですけど、僕はそこにはあまり馴染めなかったんですよ。アメリカのブルースを歌うことには抵抗があったんですよね。「これを僕が歌うのはダメだろう」という気持ちがあった。アメリカのデルタの綿畑の人たちの歌を、どうして大阪の片隅の10代がそれっぽい顔をしてやるのか。僕は、「そんなことはやりたくない」と思っていた。たぶん僕にとって、ブルースって、自分自身から出てくるものでないといけないんだと思います。物語を書くといっても、そこに嘘成分が入ると、僕は途端に嫌になってしまうので。それから年月を経て、やるせなさや悲しみを聴きやすく、ポップに昇華しているブルースと呼ばれる音楽を好んで聴くようになりました。学生時代は音楽に対してまだ頭で理解しようとしていたから、音のカッコ良さにまだ気づけていなかったのかもしれません。

―「ブルース」という言葉と今回のアルバムを重ねてしっくりくるのは、曲の主人公たちは現実社会を生きていく中で受けた傷や疲労を抱えていることを感じさせるけど、でも悲痛だったり、絶望的だったりするような響きは、どの曲にもないんですよね。どの曲も、どこかで光を見ている感じがあるなと思います。

そうですね。ただ、「大きな光を見せたい」という気持ちはないんです。それよりも、自分ひとりだけの光でいいから、失ったものがあったとしても微かな光を握り締めて1歩踏み出していけるようなものにしたいという思いがありました。未来を見たい人、未来を見ざるをえない人、いろんな捉え方ができると思うんですけど、見えているものは、光であってほしいなと思いながら作っていましたね。

―このアルバムの楽曲たちの多くは、どこかで記憶や喪失に向き合っている部分がありますよね。“青春の響きたち”や“風を切る”ではそれが青春性のある描写で表れているし、“大人になっていくのだろう”や“地下鉄のフリージア”、“あとがき”といった楽曲では、より生活に根差した陰影を感じさせる表現をされていると思うし。こうした曲を聴いていると、以前、フジファブリックとしてお話を伺ったときに、山内さんが「自分たちの音楽にあるのは単純なノスタルジーではなく、“未来を見るための過去”だと思う」と仰っていたのを思い出すんです。この記憶や喪失に向き合う視点というのは、やはり、山内さんの人間的な眼差しが投影されている部分でもあるのかなと。

生きるのに必死なんですよね、曲の主人公もそうだし。みんな懐かしい瞬間に助けてもらいながら生きている。“白”をアレンジしてくれた百田留衣さんは、ずっと昔からの知り合いなんですけど、彼がレコーディング中に「総一郎って、めっちゃいろんな覚えてるな」って言っていて。確かに、僕っていろんなことを覚えているんです。心のシャッターを切った瞬間をずっと覚えてる。それが僕の歌を作るときのもとになっているのかもしれないです。振り返ることによってもちろん、何かを送り出したり、自分から距離が離れていくものを見送りながら進んでいかなきゃいけないことはたくさんあって。でも、それってきっとみんながそうだと思うんですよ。極端な話、5分前の自分はもういないわけで。毎秒毎秒、僕らは何かを失っているんですよね。

―そうですよね。失うということは、自分が今生きていることと同時にあることなんだと思います。

大人になって、失うことに慣れていくと、心を固める方向に行ってしまうこともあると思うんです。溶かせないくらいに心を固めてしまって、どんな熱でも溶かせない硬質なものにしてしまう。そうすると、あとはもう忘れていくか、ただ「しこり」として残すことしかできなくなってしまう。でも、僕はそれを溶かしたい。その溶かす作業が苦しいときもあるんですけど、歌を作るということは、どこかでそれに向き合わないといけないことなんだろうなと思います。自分の心には何が残っているのか、自分にとって何が美しかったのか、何がこんなにも自分を駆り立てたのか……そういう根源的な部分は、無視したくないんです。2曲目を“白”というタイトルにした理由のひとつでもあるんですけど、僕たちフジファブリックが歩んでいる道も、聴いてくれる皆さんが歩んでいる道も、それぞれが初めての道を歩いているので。それは新雪の上を、足跡を付けながら歩いているようなものだと思うんです。

『白』MUSIC VIDEO

『青春の響きたち』MUSIC VIDEO

『歌者 -utamono-』全曲Trailer

『History of “歌者 -utamono-』Trailer

各店舗別特典

「フジファブリック HALL LIVE 2022」限定特典

HALL LIVE限定特典

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※各特典は先着順となりますので、お早めにご予約ください。

LIVE

山内総一郎 HALL LIVE 「歌者-utamono-」

日時      4/9(土) OPEN 17:00 / START 18:00
会場      東京・昭和女子大学人見記念講堂
チケット料金  前売¥7,700(税込)
一般発売日   3/26(土)AM10:00~
お問い合わせ先 ディスクガレージ 050-5533-0888